今週は、世界同時株安で円高となった。ところで、あらためて読み直すと、2月10日のドイツ・エッセンG7(7カ国財務相会議)の声明には、この動きを「予告」していたような部分がある。G7当局者たちの中にはこの間、何かのきっかけでボラティリティー(相場の変動率)が高まれば、マネーフローの逆流が起こり、一種のクラッシュに向かうリスクへの懸念があり、それが現実になったともいえそうだ。エッセンG7終了後の記者会見で以下のようなやりとりがあった。
尾身財務相:「この最初の方のパラグラフの『我々は、こうした経済動向が意味するところが市場参加者に認識され』ということについては、我々は様々なマーケットが、特に為替市場が一方向に偏って行動することのもたらすリスクを認識することが望ましいと考えているという意味でこれを言っているわけであります」。
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記者団:「(略)『彼らのリスク評価』のこのリスクって何を意味しているのでしょうか」。
尾身:「これは一方的に偏って行動することのもたらすリスクを認識することが望ましい」。
記者団:「それは為替レートがっていうことですか」。
尾身:「マーケットの行動についての話です」。
記者団:「例えば円キャリートレードなんかは意味してるんでしょうか」。
福井日銀総裁:「様々な市場におけるリスクの偏ったとり方というように理解していただきたいと思います。為替市場も含まれているということであります」。
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世界の金融市場は、2月27日の中国株暴落を一つのきっかけに、世界同時株安、そして為替は円急反騰といった展開になっている。これは、世界的な株買い、G7でも日銀利上げでも止まらない円売りといった「一方的に偏って行動することのもたらすリスク」(尾身財務相)の、まさに反動が入った結果と見ることができるだろう。実際、G7当局者たちの間には、この間以下のような考え方があった。
日本の個人投資家による為替投資、「FX投資」を含めた世界的なリスク投資拡大が続いている背景には、低いボラティリティー、つまり相場の安定が続いているということがある。逆にいえば、ボラティリティーが高まれば、そのような流れは変調する可能性がある。
では、ボラティリティーが高まるきっかけとして注目されるものは何か。3年で4倍もの急上昇となっているインド株は大丈夫か。中国政府自身がバブル懸念を指摘している中国の株価はどうか。
何がきっかけになるにしても、ボラティリティーが急上昇するようなら、リスク投資の流れは止まり、そして逆流するリスクもあるだろう。もしそんな動きになったら、一種のクラッシュに向かう懸念すらあるだろう――。
新興市場株価急落の一つのきっかけになったのは、先週後半急浮上してきた米住宅ローン焦げ付き懸念だろう。これによりリスク・プレミアムが急上昇、それでリスク投資の負担が拡大したことで、よりハイリスクな投資先、つまり新興市場株などが崩れ、それがさらにリスク・プレミアムを上昇させる展開になったということだろう。
こういう中で、リスク投資の逆流が起こってきた。リスク投資の代表格が株式投資だから、リスク投資逆流の中で世界同時株安になるのは理解しやすい。
ところで、そんなリスク投資は、ここ数年記録的な拡大となっていたが、その大前提にあったのが世界的過剰流動性だった。つまり未曾有のカネ余りで、その主役が「ジャブジャブの円」。この結果、いわゆる円キャリー取引は、記録的に拡大するリスク投資の中で最も大きな割合を占める資金供給源になっていたと見られる。その意味では、リスク投資逆流は円キャリーの逆流であり、つまり円買い戻しだ。
この構図はやはり98年秋に似ているところがある。98年秋は、円キャリー逆流もまだ利食い中心の段階では落ち着いていたが、ヘッジファンド破綻、新興市場危機が表面化してくると、今度は損切りの円買いに殺到、「狂った円高」が展開した。その二の舞に向かっていく可能性も慎重に見極める必要がありそうだ。今月はG7や日銀利上げなど重要イベントが続いた1ヶ月だった。しかし終わりが近づく中でドルは頭が重くなり、例年通りの「逆張りの2月」となっている。このまま月末終値でドルが120.70円を下回れば、例年の2月パターン通りとなるが、それを決めるのは米金利だろう。FRB議長による年2回の重要議会証言の一つが2月中旬におこなわれた。報道を読む限り何の変哲もなさそうな内容だったが、米長期金利は急低下、そしてドル一段安となった。FX
なぜ、このような反応になったかといえば、この証言を受けて、FOMCが次回の会合でこれまで続けてきた引き締めバイアスを解除し、金融政策の運営姿勢を中立にするとの見方が浮上したためだろう。
最近の米金融政策パターンからすると、引き締めバイアスを解除すると、その後中立が複数回続くことはなかった。つまり、次の3月FOMCで中立にするということは、次の次、5月FOMCで利下げといった意味になるわけだ。 もちろん、この3月中立化との見方が正しいかということはある。また、かりに3月に中立に戻したとしても、この間のパターンとは異なり、中立が複数回続く可能性もないとは言い切れないだろう。
ただし、確実に指摘できることは、この数ヶ月ドル円は米長期金利と強い相関関係が続いてきたということ。そして、この年2回おこなわれるFRB議長による重要議会証言の後は、米長期金利のトレンドができやすい。
以上のことからすると、今回のバーナンキ発言を受けて米長期金利が急低下し、その中でドル一段安になっていることはわかりやすい。 ところで、2月は「逆張り」傾向が強いということを以前紹介したことがあったが、これまでのところまさにそんな感じになっている。今回もそんな経験則通りの展開になるなら、今月末のドルは120.70円を下回ることとなる。FX
過去の2月相場を調べてみると、ドルが「高く始まると安く終わる」傾向が確認できる。今年の2月は120.70円で寄り付き、そしてG7明けには一時122円に乗せたが、その後は120円割れへドル反落となる場面もあった。先週からふたたび120円を超えて、さらに121円すら超える場面もあったが、「高く始まったら安く終わる」といった「逆張りの法則」が機能するなら、月末のドルは120.70円を下回る可能性があるということになる。
2月は、ドイツG7、FRB議長重要議会証言、日銀利上げとビッグ・イベントが連続した1ヶ月だった。しかし結果的には、例年通りの「逆張りの2月」に近い状況がここまで続いている。その背景には、重要イベント以上に、日本企業の3月末決算期が近い中でリパトリエーション(資本の母国回帰)が起こりやすいということがあるだろう。 日銀利上げでも円安になっている。そもそも昨年の2回の「利上げ」後も円安になっていたのだから、パターン通りということではある。ただし、そろそろ少し注意する必要が出てくるかもしれない。私は、「壊れたスポーツカー」のことを思い出した。それは、2000年春のITバブル破裂前に、ある人が書いた文章の中にあったものだ。基本的な考え方は以下のようなものである。
ブレーキを踏んだら減速する、止まるというのが正常に機能している自動車だ。しかしブレーキを踏んでも止まらない、逆に加速するようならその自動車は壊れている。利上げと株価の関係も基本は同じだろう。利上げしたら株高が止まる、下がるというのが普通だ。利上げしても株価が続伸するというのはちょっと気をつけたほうがいいだろう。
ブレーキの壊れた自動車は、何かにぶつかって止まるしかないだろう。それと同じように、バブルの株価は理屈では止まらない、自滅する以外ないだろう。
ITバブルのナスダックは、99年6月からのFRB利上げも無視し続けて急上昇するが、2000年3月に天井をつけて暴落に転じた。5000ポイントから2000ポイント割れ、最大8割もの暴落となるため、バブル破裂は誰もが認めるところだが、あの2000年3月のバブル破裂始まりのきっかけが何だったかを覚えている人はほとんどいないのではないか。
現在の円安が、このITバブル当時のナスダックのようなバブルかはともかく、利上げでも逆に円安加速となっていること、そしてそれ以上にそんな動きをとくに不思議と感じなっているということは、少し気になるところである。理屈で説明できない動きは理屈抜きで終わるというのが、歴史の教えるところである。99年6月からの利上げを無視し続けたITバブルは、結果的に9ヵ月後の2000年3月から破裂に向かった。さて、昨年7月のゼロ金利解除から数えて9ヶ月後は今年4月だ。理屈で説明できる動きより、むしろ「理由なき円高」という動きが起こることに注意する必要のある段階になってきているのではないか。FX
近年の円安基調終了も、むしろきっかけを説明するのが難しい。たとえば、ドル円は2002年1月31日に135.20円というドル高値・円安値を記録し反転しているが、この前後に為替介入やG7の特別な動きは確認されない。
2002年2月9日に発表されたG7声明では、「我々は、引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力していく」とまったく当り障りない表現にとどまり、もちろん135円の円安に対する懸念など何もなかったが、それでも結果的に円安・ドル高はそこで終了となったのである。
また、98年8月11日に、ドル円は147円を記録したが、さすがにそれまでの過程でドル売り・円買い介入はあったものの、それも同年6月17日が最後。これを見る限り、この147円までの円安は介入で終わったのではなく、やはり自然に終わったということだろう。
バブルのような理屈で説明できない「へ理屈の相場」の終わり方を考える上でヒントになりそうだ。
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